受給者証
保育園に通っている子が、発達に偏りがあり、支援が必要とされる時、そういった専門の施設に行く時にまず必要なのが、受給者証である。
言い換えれば、受給者証がなければ、発達支援施設に通うことができない。
しかし、この受給者証を取得するのにためらう親御さんが大半だ。
もちろんそうだと思う。
支援が必要なことは分かるが、その受給者証を取得するというその行為が、自分の子がまるで障害者であることを認めてしまうことになってしまいそうだから。
自分の子を障害者だと認めることに躊躇しない親はそんなにいないだろう。
困っているのは山々だが、障害児と認めたくはない。
その天秤で、迷うのが親心だと思う。
さらに、受給者証を取得するための書類として、医師の診断書や意見書等が必要となれば、事は更に重大だ。
その行為そのものが、とてもハードルが高く思えてしまう。
だから、その手前で踏みとどまっている親子はたくさんいる。
職員としては、その気持ちが良く分かるので、例えその子に支援が必要だと明らかに分かっても、そんなに強く勧められない。
ひとつ言えるのは、受給者証を取得したからと言って、いきなりその子が障害児扱いになるわけではない。
似たようなもので最たるものに、「療育手帳」があるが、これは障害児を証明する時に使うものであり、「受給者証」は、決してその役割を担わない。
あくまで「受給者証」は、療育施設に通うための入場券と考えれば、少しは考え方が変わるかもしれない。
実際、通ってみて、本当に良かった、というのがほとんどの親御さんの意見であり、多少の差はあれ、基本的には子どものためになっているのだから、もちろん通った方がいいのは事実で、しかも、早くからそういったところに通う子どもほど、成果が見えるのも否めない。
だから、保育園側としては早くからの支援を求めるが、保護者側としては、なるべく自然と成長する方を期待しているために、通わせるのが遅くなり、ここでも噛み合わないということになる。
そんなことを職員同士で話していたのだけれど、誰かが、「子どもができたら、母子手帳とセットにして、最初からみんなに受給者証を配布しておけばいいのにね」ということを言い出し、それは本当にそうだなと思った。
必要か必要でないかは後にして、とりあえず、いつでも受給者証を条件なく使えるとなれば、もっと気軽に発達のことを色んなところに相談できたり、それを使って療育に行けたりして、とても便利で心強いものに変化する。
療育に通うことが、とても自然なものになり、障害児と健常児、などそういった白黒付けるような見方も減っていくように思う。
国の制度がそのように変わらないかな、と、親の立場からも切望している。